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第11章 桜を見に行こう 2/7

last update 최신 업데이트: 2025-05-16 18:00:04

 土曜の朝。

 悠人〈ゆうと〉が目覚めると、既に小鳥〈ことり〉は台所で料理を作っていた。

(そう言えば昨日も、仕込みがあるからとか言って、遅くまで起きてたな……)

「おはよう、小鳥」

「あ、おはよう悠兄〈ゆうにい〉ちゃん」

 いつもの元気な声だが、目の下にクマが出来ていた。

「昨日寝たのか?」

「うん、ちゃんと寝たよ」

「そうか、ならいいんだけど。無理するなよ」

「だいじょーぶ。小鳥、若いから」

 そう言って胸をはった。

「サーヤと弥生〈やよい〉さんももうすぐ来るから、悠兄ちゃんは顔洗ってきて」

「ああ」

 * * *

 準備を済ませた頃に、弥生がやってきた。

「悠人さん小鳥さん、おはようございますです、ビシッ!」

「おはよう弥生ちゃん。って、またすごい荷物だな」

「はい。今回は車での移動ということで弥生、全力でお弁当を作ってまいりましたです、ビシッ!」

「シド覚醒バージョンのベルトとは、気合も十分だね」

「さすが悠人さん、今日も冴えてますね」

「そろそろ行こうか、悠兄ちゃん」

「って小鳥、お前もすごい荷物だな」

「この中には、小鳥の愛がたっぷり詰まってるからね。楽しみにしててね、悠兄ちゃん」

「はははっ……」

 * * *

 悠人は昨日のうちにレンタルしておいた車を取りに、駐車場へと向かった。その間に小鳥と弥生は沙耶〈さや〉、深雪〈みゆき〉と合流し、一階へと降りていった。降りると既に、悠人がワンボックスカーから降りて待っていた。

「おはよう沙耶」

「おはようございます、遊兎〈ゆうと〉」

 赤のダウンジャケットにリュックを背負った沙耶が、小さなあくびをしながら頭を下げた。膝下までのジーンズは小鳥のお古で、サイズ直しをしたものだった。

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  • 幼馴染の贈り物   第11章 桜を見に行こう 2/7

     土曜の朝。 悠人〈ゆうと〉が目覚めると、既に小鳥〈ことり〉は台所で料理を作っていた。(そう言えば昨日も、仕込みがあるからとか言って、遅くまで起きてたな……)「おはよう、小鳥」「あ、おはよう悠兄〈ゆうにい〉ちゃん」 いつもの元気な声だが、目の下にクマが出来ていた。「昨日寝たのか?」「うん、ちゃんと寝たよ」「そうか、ならいいんだけど。無理するなよ」「だいじょーぶ。小鳥、若いから」 そう言って胸をはった。「サーヤと弥生〈やよい〉さんももうすぐ来るから、悠兄ちゃんは顔洗ってきて」「ああ」 * * * 準備を済ませた頃に、弥生がやってきた。「悠人さん小鳥さん、おはようございますです、ビシッ!」「おはよう弥生ちゃん。って、またすごい荷物だな」「はい。今回は車での移動ということで弥生、全力でお弁当を作ってまいりましたです、ビシッ!」「シド覚醒バージョンのベルトとは、気合も十分だね」「さすが悠人さん、今日も冴えてますね」「そろそろ行こうか、悠兄ちゃん」「って小鳥、お前もすごい荷物だな」「この中には、小鳥の愛がたっぷり詰まってるからね。楽しみにしててね、悠兄ちゃん」「はははっ……」 * * * 悠人は昨日のうちにレンタルしておいた車を取りに、駐車場へと向かった。その間に小鳥と弥生は沙耶〈さや〉、深雪〈みゆき〉と合流し、一階へと降りていった。降りると既に、悠人がワンボックスカーから降りて待っていた。「おはよう沙耶」「おはようございます、遊兎〈ゆうと〉」 赤のダウンジャケットにリュックを背負った沙耶が、小さなあくびをしながら頭を下げた。膝下までのジーンズは小鳥のお古で、サイズ直しをしたものだった。

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     小鳥〈ことり〉は彼女に、昨晩から自分の身に起こっている変化を話した。 鉛筆を走らせながら、その女は黙って聞いていた。 * * *「なるほど……」 鉛筆を止め、コーヒーをひと口飲むと、その女は小鳥の顔を優しく見つめた。「可憐な乙女、悩むことはない。君は今、本当の恋をしてるんだよ」「本当の……恋……」「君は今まで、その悠兄〈ゆうにい〉ちゃんなる男性に憧れ、慕っていた。安らぎを感じていた。それは恐らく、家族から得られる安らぎに近い。君は彼を男としてでなく、兄や父に近い感情で見てきたんだと思う」「家族……」「しかし今、君は彼のことを考えると苦しくなる。きっと君は、彼を一人の男として意識し始めているんだよ」「人を愛するって、苦しいことなんですか?」「苦しみもある、と言った方がいいね。その人を思い浮かべるだけで、胸が締め付けられそうになる。でもそれは、幸せ故の苦しさなんだ」「……よく分かりません」「失いたくない、もっと自分を見てほしい。意識してほしい、愛してほしい。相手に求めるその気持ちは、自分だけではどうにもならない。相手の気持ちに入ることは出来ないからね。だから苦しむし、不安にもなる。 でもその苦しみがあるからこそ、相手をいたわり、大切にしようとする気持ちが育まれていく。お互いがそういう気持ちになったらどうだい? 最高の関係が築けると思わないかい?」「そう、ですね……はい、思います」「君は本当に素直だな。その素直な気持ち、大切にしてほしいと切に願うよ。君のような人種、今じゃ絶滅危惧種だからね」「褒められてます?」「ああ、褒めてるとも。で、だ。君のもうひとつの疑問も、今の話から答えが導き出される。 乙女。君は悠兄ちゃんを、男として意識するようになった。愛してほし

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